皆様からお寄せいただいた、「還暦祝いサプライズ体験談」をご紹介しています
老い先短いのだからおいしいものしか食べたくない
父の誕生日は1月1日、つまりお正月そのもの。
子供のころから「誕生日おめでとう」以前に「新年明けましておめでとう」ばかりで、孫がいるような歳になった今でも、「明けましておめでとうはわかるけどさ」と、少々不機嫌になるくらいコンプレックスだったようです。
そんな父の還暦はぜひ盛大に祝いたいと思っていたのですが、問題はいわゆる「典型的」な還暦祝いを父が非常に嫌っていたこと。
50過ぎたあたりから「赤いナントカなんて死んでも着たくない!」といい続け、60近くなったころからちらほらと届きはじめた赤色グッズを含む還暦グッズカタログを見ては「こんなのいらんからな!!」といい続けていました。
そんな父は食べることが大好き。
事あるごとに「老い先短いのだからおいしいものしか食べたくない」というのが口癖で、しかも歳に似合わずこってりした洋食が大好きです。
中でもモツ系のこってり系、つまりフォアグラやレバーパテの類いは大好物で、あれば大きなひと瓶を1人で1日で全部食べきってしまうほど。
また癖の強いチーズも大好きで、昔からロックフォールやスティルトンなど強烈な香味を誇るチーズを晩酌のツマミにしているのをちょくちょく見かけたものです。
そんな父の還暦を祝うならば、もう当人の大好物で埋もれていただくしかない!と思いました。
しかしパテやチーズの類いは国内で買えば恐ろしくいいお値段がします。
どうしたものかな、と悩んでいたところ、海外に住んでいる従妹が「うちから送ろうか」といってくれました。
もちろん一時帰国した際には盛大におごると約束して、その有り難い申し出に乗りました。
何がいいか2人で綿密にメールですり合わせる事1週間。
クリスマス時期に入ると届けが遅れるということで早めに発送してもらい、どうにか父に見つからずに受け取り、そして新年まで父から隠し通し続けました。
母からの協力もあってどうにか隠し通しつつ、父の目を盗んできれいにラッピングし直して、そして大晦日。
TVのカウントダウンが終わって「Happy New Year!」と来たと同時、「父さん誕生日おめでとう!」といえばびっくり顔の父。
「あ、うん、ありがとう」と少し照れくさそうにしている父に、すかさず隠してあったプレゼントを抱えて渡しました。
「これ、父さんに?」と目を白黒させつつ包みを開けて、中にいっぱい詰まったパテやチーズを見るや、父がフリーズしました。
「これ、どうしたの?」
「従妹ちゃんに頼んだの。でも中身は皆で考えたよ」
「これ、もらっちゃっていいの?」
全員で頷けば、父は大事そうに包みを抱えて「ありがとう」と。
ちょっと目が潤んでいたかもしれません。
確かにここまで仕込んでのプレゼントは、今まで無かったですから驚きだったでしょう。
その後、父は日持ちしないものは全て冷凍庫に突っ込み、日持ちするものは自分の書斎へ持ち込んで、毎日少しずつ美味しく楽しんでいるようです。
赤いちゃんちゃんこなどより、おいしい食べ物の方が、父の健康を守り続けるにはよいように思います。